「長者番付」と言うと毎年発表される高額納税者公示制度や、米誌フォーブスの世界長者番付などを思い出す人も多いだろうが、落語となるとちょっとひとひねりしている。弥次郎兵衛、喜多八の「東海道中膝栗毛」に出てくるような登場人物の旅の途中での話である。本題に入る前にいろいろなエピソードを挿入していけば、長さを自由に調節できるので、噺家にとっては便利な咄である。 とある村に差し掛かって茶店に入った二人。酒を頼むがろくなのがない。「むらさめ」と刀のような名前の酒は、村を出るとすぐに醒めるからその名がついた。「のきさめ」「じきさめ」などはもっとひどい。近くに造り酒屋があると聞き、二人はそこを訪れる。 主人に
2024年08月12日 12:17
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『野ざらし』と言っても何のことかわからない人も多くなっているのではないだろうか。現代の日本社会で、人骨の野ざらしを見ることはまずないだろう。江戸時代にはよくあったそうで、隅田川に死体が流れてきたのを見た場合は川の中央に押し出して海に流れていくようにしていたという。人目につかない川岸に流れ着き、白骨化することは普通であったようだ。 この噺の内容は、中に出てくる歌(サイサイ節)がすべてを語っている。〽鐘が~ ボンとなりゃぁさ 上げ潮南風(みなみ)さ カラスがパッと出りゃ コラサノサ 骨(こつ)がある、サーイサイ」〽そのまた骨にさ 酒をばかけりゃさ 骨が服(べべ)きてコラサノサ 礼に来るサーイサイ〽
2024年08月12日 12:16
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酒の上での喧嘩はよくあることだが、武士の世界では刀を持っているだけに切りあいになることが多い。しかし、武士というものは刀を抜く以上自分の命をかける必要があった。切り捨てごめんといってもそれなりの理由がなければならない。ある武士が、走ってくる町人を追いかけてきた侍に「斬ってくれ」と頼まれるままに切り捨てたところ、その侍はいなくなってしまい、斬った理由を認められず死刑になったという例もある。ある藩で酒がもとでけんかがあり、1人が斬り殺され、斬った方は翌朝素面に戻ったところで切腹。1度に2人の家来を失ったお殿様は一切の禁酒を申し渡した。藩邸内に酒の持ち込まないよう見張る番屋ができ人呼んで「禁酒番屋」
2024年08月12日 12:12
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前回書いた『居酒屋』では、客が店に入っていくと小僧が「宮下へお掛けなさい」という場面がある。店の鴨居の一画に大神宮がお祭りしてあって、客は「大神宮様の下で宮下? 電車の停留所みたいなこと言いやがったな」となるが、ねぎまの殿様の場合は「大神宮様これに鎮座まします」と二拝二拍手一拝。この殿さまは家来1人を連れて雪見の途中で腹が減り、居酒屋へ入る。これが野駆けの途中で百姓家に入ると『目黒のさんま』になる。 『ねぎまの殿様』は先代の「お婆さんの今輔」といわれた5代目古今亭今輔が、よく演じた。雪の積もったのを見た殿様が、風流を求めて向島の雪を見に出掛ける。向島の長命寺には「いざさらば雪見に転ぶところまで
2024年08月12日 12:10
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だんだん暖かくなってきて、お花見が待ち遠しい季節となった。この月末ころが東京では見ごろだという。花見の落語はたくさんある。『長屋の花見』『あたま山』『花見酒』『花見小僧』『百年目』......。上野の寛永寺境内などで花見は行われたが、何といっても宮様がいらっしゃるお寺の中だけに、歌舞音曲はもちろん飲酒もご法度で、日暮れに入相の鐘が鳴ると門を閉めて追い出されてしまう。・入相をおつもりにする花の山・花盛り吹くより鐘は仇なり そこで8代将軍吉宗が、飛鳥山や隅田川の堤に桜を植えさせ、庶民が思う存分楽しめるようにした。隅田堤は細長いのでどうしても歩いて観る人が多くなる。そこで宴会などに人気があったのが
2023年08月20日 16:52
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先代の三代目三遊亭金馬がよくかけていた話である。「居酒屋も一刷毛塗ればバーとなり」という、たぶん金馬自作の川柳をまくらに、居酒屋に客が入っていくところから始まる。客と居酒屋の小僧との掛け合いが面白い。何ができるかと聞く客に「できますものはつゆはしらたらこぶあんこうのようなもの、ぶりにおいもにすだこでございますぴぇ~」と答える。客はさっぱり分からないと何度か言わせたあげく、「今言ったものなら何でもあります」と言う小僧に「じゃあその『ようなもの』というのをくれ」と注文。この場面は秀逸で人口に膾炙(かいしゃ)しており、1981年には森田芳光監督で『の・ようなもの』という題で映画もできている。 時代
2021年03月18日 18:56
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ホームページに掲載している「落語と酒」にいくつかの話を追加しました。昔のものですが、お時間があったらお立ち寄りください。 「歌舞伎と酒」もどうぞ。 『酒だより』も掲載したいのですが、pdfを転載することが出きません。方法をご存じの方はお教えください。
2020年09月12日 16:14
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「月も朧(おぼろ)に白魚の......」 で有名な七五調のセリフが並ぶ河竹黙阿弥の代表作。お嬢吉三、お坊吉三、和尚吉三の三人が出会い、義兄弟となり、一緒に死んでいくという話。安政7年(1860年=3月18日に万延に改元)1月市村座での初演。 お坊吉三の父、安森源次郎は将軍から名刀庚申丸を預かっていたが、その刀を盗まれてしまい、源次郎は切腹、安森家は断絶となる。盗んだのは和尚吉三の父伝吉。この伝吉の次の子が、お嬢吉三に百両奪われたおとせとその双子の兄十三郎。十三郎は八百屋久兵衛に養子に出され、道具屋の木屋の手代になっているが、夜鷹のおとせと兄妹であることは2人とも知らず、愛し合う関係になってし
2020年09月09日 19:00
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『新皿屋敷......』とあるように、この歌舞伎は『播州皿屋敷』を換骨奪胎した河竹黙阿弥晩年の傑作である。『播州皿屋敷』は、享保5年(1720年)に京都で歌舞伎『播州錦皿九枚館』として上演された記録がある。次いで寛保元年(1741年)には浄瑠璃『播州皿屋敷』が大坂の豊竹座で上演された。また宝暦8年(1758年)には講釈師の馬場文耕が『皿屋敷弁疑録』という題で、舞台を江戸の番町に移した。現在『皿屋敷』というとこの講釈がもとになっており、五番町の千姫の吉田御殿跡に屋敷のあった火付盗賊改、青山播磨守主膳と下女のお菊の話となった。十枚揃いのお皿のうちの一枚を割ってしまったため手討ちになって井戸に投げ
2020年09月09日 18:54
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『酒だより』に連載した「落語と酒」「歌舞伎と酒」の転載をはじめました。まだ全部ではありませんが、徐々に追加していきます。 『酒だより』そのものは、pdfの添付ができないのでまだ貼り付けることができません。どなたかpdfを張り付ける方法をご存じでしたらお教えください、
2020年09月09日 18:47
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